「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面㉙
鷲巣編part14『生還そして最終決着へ』

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6回戦南3局、アカギは海底で起死回生の満貫を鷲巣から直撃する。
これでトータル1900㏄の血液を抜かれた鷲巣は、昏睡状態に陥った。

もはやこれまでかと思われた瞬間、アカギは暴挙にも似たエールを送る。
そして、鷲巣は…。

鷲巣生還

意識を失い一度は地獄に落ちた鷲巣だが、打倒アカギへの執念で蘇生する。
アカギ同様、真のライバルとの戦いに思いを馳せることにより奇跡を起こした。

とどのつまり、生きるとは思いなのだ。
実は、それこそが生きることの営為なのかもしれない。

安岡と仰木は、思わぬ鷲巣の生還に狼狽した。
だが、アカギにはむしろ歓迎ムードさえ漂っている。
鷲巣の生還を予期し、“ただ起きるべきことが起きただけ”といった風情である。

それはそうだろう。
そのために雀卓にまで上がり、鷲巣の頭を踏みつけたのだから…。
とはいえ、鷲巣は1900ccもの血液を失っている。
赤木しげるという神域無双の強者を倒すことだけが、かろうじて命の灯を繋ぎとめていた。




オーラス開局

泣いても笑っても最終決戦オーラス、6回戦南4局の火蓋が切って落とされた。
ついに長かった夜の結末、王と悪魔の戦いが決着する。
鷲巣を逆転するには事実上不可能な点差が開いており、アカギが勝つにはツモあがりか直撃して血液採取のボーナスにかけるしかない。

開始早々、異常なまでの牌の偏りが起こる。
配牌時、12枚持ってきたところでアカギは索子オンリーの清一のイーシャンテンとなる。
かたや、鷲巣も初っぱなに中を2枚引いた以外、全て異なる一九字牌を手繰り寄せていた。
つまり、次に北か一索でテンパイする。

運命の13牌目、アカギは北を引きテンパイならず。
鷲巣は黒牌を引いたため、テンパイしたかは分からない。
ところが、鷲巣の後ろで見ていた部下たちは、歓喜の涙をこぼしている。
鷲巣巌こそ、真の王なのだと…。

親が第一打を切り、アカギ1巡目のツモ。
絶好の一索を引き入れた。
北を切れば、これでアカギも索子の清一テンパイだ。
しかも、1112345666888という1234567の7面待ちである。

だが、誰よりも鷲巣巌を熟知しているアカギは、国士無双をテンパイしていることを見破っていた。

「鷲巣は繋がっている。オレたちの知らない住人…“計り知れない何か”と!」

にもかかわらず、赤木しげるは北を切ろうとした。

「信じないのか?自分の直感を!感じているはずだ…その北の禍々しさを!通らねぇって!通る根拠は?確信は?」

自重するよう必死に止める安岡。
凡夫とはいえ、ここまで鷲巣と卓を囲んでいた安岡は“神や魑魅魍魎をもかしずかせる闇の王”の底知れぬ神通力を感じ取っていた。

「確信はない!切るさ!そこに切る理由があれば…!」

北単騎に受けていては間に合わない…理ではなく感性で嗅ぎ取る赤木しげる。

「命を賭けて切る理由とは…?」

凍りつく安岡は懸命に声を絞り出す。

「クク…それはこの北が…邪魔だからさ!」

赤木しげるは北を切り飛ばした!
まるで自らの生死など興味がないように…。

シーン…。
痺れるような緊張感が支配する中、鷲巣が声を上げる。

「ククク…とりあえず、祝福ってことか…命知らずに…!」

鷲巣が引いた最後の牌、それは北だった。
鷲巣は本当にテンパイしていたのである。
つまり、赤木しげるは2分の1の賭けに勝ったのだ。

だが、鷲巣巌は確信していた。
ここでアカギが通そうが関係ない。
次の自分のツモで、一索を引くのだと…。

もちろん、アカギも感じていた。

「この場を制しているのは鷲巣…このまま回しては引かれる!」と。

アカギは安岡が切った6索をあがることなく明カンした。
1112345888 カン6666
これで3面待ちに激減したが、リンシャンでツモあがればアカギに凱歌が上がる。
だが、運命はアカギに微笑まず、リンシャンツモは空を切る。

そして、安岡のツモ番。
そのとき、安岡の魂は震えていた。
鷲巣巌という人智を超越した「王」の圧を受けながら不退転の覚悟で身を削り、最後まで勝負を捨てず、一瞬一瞬に殉じてきた赤木しげるという奇跡の存在に!

「たとえ、このオレが死のうとも…こんな男を…こんな宝石を死なせちゃなんねぇ!」

その一途な思いが奇跡を生む。
アカギが暗刻で持つ8索を引いたのだ!
その値千金の8索を切ると、当然の如くカンするアカギ。

「まだ終わらない!まだ…!」

しかし、リンシャンツモはまたもや不発に終わる。
とうとう、決して回してはならぬ鷲巣のツモ番がやってきた。
致死量ギリギリの血液を抜かれ青色吐息の鷲巣だが、絶対に引けるという自信だけはみなぎっている。

ところが、引いてきたのは…1索に描かれる鳳凰が飛び去った白であった。

「ここであがり牌を引かぬはずなど…あるわけがない!」

その瞬間、鷲巣巌は気が付いた。
先ほどのカンで、赤木しげるがリンシャンから引いてきた牌…それこそが1索だったのだと…。
このあたりの嗅覚は、さすが“何者かと繋がっている”鷲巣巌ならではだ。

必死にカンをしてあがくなど、アカギらしくないと鷲巣は腐す。
しかし、赤木しげるは最善を尽くすためならば、体裁など気にせず粘ることも厭わない。
最後の血の一滴、胸打つ鼓動そのひと叩きまで諦めない。
こうした赤木しげるの生き様が、“計り知れぬ者”と繋がる鷲巣の国士を封印したのである。

いや、アカギひとりの力ではない。
いつもは欲に絡め取られた安岡も「赤木しげるという至宝を助けたい!」という純粋な思いがあればこそ、一世一代の大仕事を成し遂げた。
まさしく「念ずれば花開く」とはこのことであろう。
人の思い…それは運命をも変えるのだ。




窒息の国士から最終形へ

鷲巣はこの時、自らのツモが空振りに終わったことを啓示として、国士テンパイは神が自らを試している“トラップ”だと看破する。
そして、最終形は別にあるのだと!

その窒息の国士を見切り、一から手牌を再構築していく。
常人ならば、たとえ空テンに薄々感ずいても、なかなか役満テンパイを崩す決断はできない。
この一刻を争う場面で…。

鷲巣は白、發と連続で引き入れた。
これで白、發、中の三元牌が対子となり、いずれも下家の部下が持っている。
つまり、あと1枚部下が持つ牌を重ねれば、いつでも好きなときに鳴くことができるので即テンパイとなる。
そして、部下の手の内にある牌で単騎待ちに受ければ終了だ。
これが瞬く間に局面が激変する、鷲巣麻雀の恐ろしさといえるだろう。 

アカギのツモ番。
もし鷲巣にツモを回せば…必ずや、アカギを仕留める牌を引くに違いない。
索子の1111235という並びの5索単騎でテンパイしていたところに、2索を引いてくる。
万事休したかと思った瞬間、アカギは1索をカンした。
そして、2235の4索待ちとなり、リンシャン牌を引く権利を得る。

「まだだ…まだ殺しうる!鷲巣巌を!」

ここで簡単に土俵を割らぬ赤木しげるもまた、まごうことなき選ばれし者である。
ドラ表示牌の西を引き、リンシャンツモに手をかける…。
引いたのは南だった。
実は、あがることこそ出来なかったものの、西と南は鷲巣にとってキー牌だったのだ。
手の中の孤立牌で、鷲巣と部下が共通して持っていたのが東南西なのである。
アカギは牌穴に眠るそれら4牌のうち2枚を食い取った。
さすが、ただでは転ばぬ赤木しげるの神通力。 

そして、安岡もアカギの妖力が憑依したかのように東をツモった。
これで、鷲巣の有効牌は東1枚となる。
安岡は2索を切ると、アカギは「ポン」の声をかけ再び5索単騎に受ける。
これは、もう1度安岡にツモ番を回し、最後に残された東を引かせるためだった。
最後まで勝負を諦めず、執念を燃やす赤木しげる渾身の打ち回し。

全ての秘術を使い果たしたアカギは、安岡に命運を託した。
人事を尽くして天命を待つ。
思えば、赤木しげるは常にこの境地で戦っていたのではないか。

「不合理こそ博打。不合理に身を委ねてこそギャンブル」と言い切る“神域の男”が、全身全霊をかけて臨んだ鷲巣巌との最終決戦。
ついに王と悪魔が奏でる地獄の黙示録が、決着の時を迎えようとしていた…。


アカギ-闇に降り立った天才 32(本ストーリー収録巻)

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