「機動戦士ガンダム」リュウ・ホセイ ~ホワイトベースの良き兄貴~

マンガ・アニメ




単なるロボットアニメの枠を超えた、ヒューマンドラマ「機動戦士ガンダム」。
この名作に登場する「木馬」ことホワイトベースには、アムロやセイラ、カイなど10代の少年・少女が登場する。
彼らは地球連邦軍の主力として活躍し、ジオン公国との激戦を生き残った。

だが、決して忘れてはいけない人物がいる。
“ホワイトベースの人格者”リュウ・ホセイである。
個人的には「黒い三連星」のガイアと並び、機動戦士ガンダムで最も好きな人物だ。

リュウ・ホセイとは

リュウ・ホセイは地球連邦軍の曹長の肩書をもつ兵士であり、年齢はまだ18歳である。

恰幅が良い彼の風貌は、失礼は承知だが、ジャイアンとハックルベリー・フィンを足して2で割ったように感じる。

ホワイトベースにはアムロやカイなど民間人が多数搭乗していたが、数少ない兵士として艦長のブライト・ノアの良き相談役を務めていた。
いや、ブライトの相談役だけでなく、リュウはアムロたちの良き兄貴分でもあった。
その人間力と器の大きさは、とても18歳とは思えない。
作中でも屈指の人格者と呼べるだろう。




人柄が滲み出るシーン

1. 人としての器の大きさ

戦闘経験の無い10代の若者たちが見切り発車の中、アムロはガンダム、リュウはコア・ファイターに乗り込み戦場に赴いた。
そのまま突撃しようとするリュウは年下の民間人であるアムロに、回り込んで戦うよう諌められる。
アムロは逆光ではなく、太陽の光を背にして攻撃する方が理に適っていることを瞬時に見抜いたからだ。

人によっては、先輩かつ軍人のプライドも手伝って、素直に言うことを聞かない者もいるだろう。
だが、リュウは後輩の意見に耳を傾け、アムロの判断の的確さを正当に評価した。
しかも、ブライトに回り込み過ぎだと叱責されたアムロを「いや、ありゃあれでいいんだ!」とフォローするなど、頼れる兄貴全開である。
何気ないシーンだが、こんなところにもリュウの器の大きさを感じさせる。

物語の序盤、ホワイトベースの乗組員たちは寄せ集めの若輩者ばかりということもあり、なかなか一致団結することができない。
特に、連邦軍きっての主戦力・ガンダムを操るアムロは周囲の過剰な期待もあり、心身ともに疲弊していく。

とうとうブライトからの視察命令を拒否するアムロ。
いきり立つブライトと反抗的な態度を取るアムロの仲裁に入ったリュウは、自ら敵情視察に立候補し、その場を収めた。
リュウは理解していたのだろう。
軍人ではなく、しかもまだ15歳の少年がエースパイロットとしての役割を求められる重圧を。
慣れないコア・ファイターでの命懸けの戦闘で、リュウも心身ともに厳しい状況だというのに…。

こうして、リュウは常にブライトとアムロら戦闘員の仲を取り持ち、ともすれば一触即発の危うい均衡を繋ぎ止めていた。
おそらく、彼がいなければホワイトベースは内部崩壊しただろう。




2. 全ては仲間のために

ところが、そんなリュウは志半ばで戦死する。
自らの命と引き換えに仲間の窮地を救った最期は、リュウ・ホセイの真骨頂といえるだろう。

リュウの死が描かれたのは、第21話「激闘は憎しみ深く」の放送回である。
リュウはランバ・ラルの奇襲攻撃により、重傷を負ってしまう。
そんな中、一時的に脱走したアムロはブライトの怒りを買い、独房に閉じ込められた。

ベッドの上で痛みに苦しむ瀕死のリュウだが、その状況に居ても立っても居られない。
まずはブライトを説得しようと試みる。

「出すわけにはイカンよ!俺たちが期待する態度を見せれば、あいつはますます自惚れる」

険しい表情のブライトに、リュウは穏やかに諭す。

「そうでもないぜ…」

「野生のトラでも檻に入れておけば、自分の立場が分かってくる」

「アムロが自分で分かるまで待つわけか…言い逃れに聞こえるな…」

「俺の言い逃れ?なぜだ…」

訝しがるブライトに、リュウは語りかける。

「人間には言葉があるんだ。ブライトはアムロとゆっくり話し合ったことがないんだろ?それじゃ…トラは大人しくならんさ」

リュウはブライトに安静を命じられるが、間隙を縫い今度は独房のアムロのもとに向かう。

心配するアムロに、リュウは痛みを堪えこう言った。

「ブライトがお前は野生のトラだって…おっかながっているんだよ。おかしいだろ?アムロ期待してるぞ!」

歩くこともままならぬ体に鞭打って、リュウはあくまで上官と部下の間に入り、橋渡しのため奮闘する。
自分の痛みよりも、人の痛みの方が耐えられないのがリュウ・ホセイという男なのだった。

そんな中、ランバ・ラルの仇を討つため、内縁の妻ハモンを中心にホワイトベースへと総攻撃をかけてきた。
リュウの進言で独房から出ることができたアムロは、ガンダムに乗って出陣する。
リュウもベッドで一緒に寝ている仲間の制止を振り切って、体を引きずりながら味方の危機に加勢する。

「ホワイトベースがやられたら、病気や怪我だって言ってられるかよ!」

トラブルで立ち往生するガンタンクに乗り込んだ。

その頃、ガンダムは敵の玉砕覚悟の特攻に苦戦していた。
ついにハモンの戦闘機に背後を取られ、もはやここまでかと思われたその瞬間のことだった!
ハモンの戦闘機に突撃する1台のコアフィター!
両機は爆発し、ガンダムは危機一髪助かった。

実は…コアフィターに乗っていたパイロット、それはリュウだった…。
あまりにも受け入れがたい現実に、泣き尽くすホワイトベースの仲間たち。

自分に代わってガンタンクに乗り込んだリュウに、ジョブ・ジョンは「僕が殺したも同然です。僕が代わらなければ…リュウさんだって、リュウさんだって…」

動かないガンタンクからコアフィターを切り離し、飛び立つリュウを見送ったハヤトも後悔と涙が止まらない。

「僕がリュウさんの発進を認めなければ良かったんです…」

悲痛な表情でブライトは言葉を絞り出す。

「アムロのことで、俺はヤツに心配をかけ過ぎたのかもしれない」

独房での会話を思い出し、アムロも慟哭する。

「リュウさん…リュウさん!」

さらに自分を責めるジョブ・ジョンを、アムロは一喝する。

「違いますよ!やめてくださいよ、ジョブ・ジョンさん!僕だってそうです…ハヤトだってそうかもしれない。みんな…みんなが…みんながっ…!」

「アムロの言うとおりだ!我々が…我々が未熟だったためにリュウを殺し、何人もの仲間を…」

ブライトはそう言うと膝から崩れ落ち、亡き友に謝った。

「勘弁してくれリュウ…勘弁してしてくれよっ!なあ…俺たち…これからどうすりゃいいんだ…リュウ!」

あのブライトが人目もはばからず、膝を突き滂沱の涙を流しながら、途方に暮れている。
思えば、ブライトも大人びているとはいえ、まだ19歳なのである。
若い身空で主力戦艦の艦長に祭り上げられ、ここまで重圧に耐えてきた。
同じ軍人のリュウという心の支えがあればこそ、職務を全うできたのである。
もちろん、アムロたちの喪失感も隠し切れないが、ブライトのそれは更に大きいように感じてならない。

それにしても瀕死の重傷を負いながら、仲間たちのために粉骨砕身するリュウの姿は涙無しでは見られない。
どうすれば、どう育てば、リュウ・ホセイのような人間ができるのだろう。

ただひとつ、間違いなく言えることがある。
それはリュウの死があればこそ、未熟な若者たちが一致団結し、成長を遂げることができたのだ。
そんな仲間たちをリュウはあの人懐っこい笑顔を浮かべ、天国から見守っているに違いない。

まとめ

「ホワイトベースの良き兄貴」リュウ・ホセイを紹介した。

彼に対する書き込みを見て、全くその通りだと感じたものがある。
それは「自分はもうオジさんだが、今でも18歳のリュウのほうが年上に感じる」というコメントだ。
私もすでに中年の域に入ったが、見識及び人間力においてリュウの足元にも及ばない。

命を賭して仲間を救ったリュウ・ホセイ。
もっと…アムロ達と共に戦う世界線を見たかったと思うのは、私だけではないはずだ。

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