「闇に降り立った天才」赤木しげるの名言・名場面㉕ 
鷲巣編part10『裏ルート』

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安全を追うあまり、鷲巣はアカギに止めさす国士無双を取り逃がす。
これで完全に、アカギは息を吹き返した。

そして、アカギには鷲巣を倒す秘策があったのだ。

「追う手はある…オレが闇と手を組めば…!」

10万点の差を無に帰す裏ルート

“幻想の国士”でピンチを凌いだアカギは大物手を狙い、反撃に打って出るかに思えた。
ところが、メンホンを狙える手牌だというのにサッサと見切り、平和のみでリーチをかける。
捨て牌とアカギの手牌から、メンホンリーチと読んだ鷲巣から直撃に成功するが、裏ドラが一枚乗っただけの3900点の安手で終わらせる。

南入し、迎えたアカギ最後の親番。
ここでも大三元を狙えるチャンス手だというのに、あえて小三元に受ける。
当然、大三元を警戒する鷲巣はアカギの黒牌を使った意表を突く勝負術に、またもや親満を打ち込んでしまう。
黒牌という“闇”と手を組んだ赤木しげるの打ち筋に徐々に追い込まれていく鷲巣。
圧倒的な点差に目がくらみ、つかの間、直撃による直取りボーナスを失念していたのである。
気付いたときには、残りの現金が融けていた。

ついに、赤木しげるは鷲巣麻雀の本質「自らの血によるボーナス払い」という土俵に引き摺り込む。
そして、とうとう悪魔のごときアカギの闘牌に、鷲巣は血液を1100㏄までに抜かれるに至った。
もうこうなれば、剣を取り合って正面から打ち合う、つばぜり合いと変わらない。
いわば札束の要塞から追い出され、無防備な鷲巣の眼前に“闇からの刺客”赤木しげるが現れたということだ。
真の意味で、鷲巣麻雀の醍醐味を味合う鷲巣巌。
その心中は察するに余りある。

それにしても、血液を抜かれ死の恐怖におののく鷲巣を見ていると、赤木しげるの精神性に驚くばかりである。
対局開始時から常に血抜きという死神に魅入られながら、揺れない打牌を打ち続けていたのだから。
通常ならば開始早々、精神に変調をきたしてもおかしくないだろう。




“巨魁”鷲巣巌の復活

意気消沈する鷲巣に原点ともいうべき遠い記憶が甦る。
何も持たず荒野に佇む、己が若き日の姿を…。

すると、突如気力がみなぎり、好牌が押し寄せる。
なんと!配牌でドラ入り七対子をテンパイしているではないか!
展開や流れなど関係ない鷲巣巌の底力。
ダブルリーチをかけると部下に一発で差し込ませ、アカギの親をあっという間に流してしまう。

ただ豪運なだけに見える鷲巣の打ち筋だが、実は英断だったのだ。
これまで度々見せてきたようにツモあがりを目指し、数巡回すなどの様子見をしていたら、逆に反撃されていた可能性が高かった。
実は、アカギにも手が入っており、受け入れ枚数が多い三色のイーシャンテンだったのだ。
もし、アカギにツモ番を回せば即テンパイし、安岡に速攻で差し込ませる展開も容易にあったのだ。

この起死回生の一撃で、今度は“生まれながらの王”鷲巣巌が復活した。
アカギの親が流れた南2局、勢いに乗る鷲巣は配牌もツモも好調である。
そんな鷲巣の様子に脅威を感じた安岡が猪口才な真似をしたために、鷲巣の跳満ツモを誘発してしまう。
すでに2000㏄(事前輸血により実質1500㏄)の血液を失っているアカギは、さらに300㏄の血液を抜き取られことになる。
合計2300㏄もの血液を失えば、アカギに死が訪れてもおかしくない。

しかし、不動心を貫く赤木しげるは、大はしゃぎする鷲巣に言い放つ。

「悪いな、鷲巣。興味がない…オレはオレの生死に!」

「アカギ…耐えてくれ…」

祈る気持ちの安岡や仰木をよそに、赤木しげるは鷲巣に予告する。

「さあな…これだけの出血は生まれて初めてだ!軽々に安請け合いはできない。しかし、もし還ってきたら…ちと面白いぜ、鷲巣…!次はあんたが震える番!約束しよう、それは…!」

 その迫力に恐れを抱く鷲巣。
両者の表情からは、どちらに死が迫っているのかは分からない。

とうとう血液を採取され、朦朧となったアカギは卓に突っ伏し動かない。
歓喜する鷲巣だけでなく、その場にいる全ての者がアカギの死を確信する。
約定通り仰木の腕を切り落とさんと、鷲巣は日本刀を上段に構え、今振り落とそうとした時のことだった。

「誰がくたばるかよ!ここからだ!勝負は!」

息絶えたはずの白髪の若者が、地獄の底から戻ってきたのである!

「薄かった…オレは生きてるって実感が昔から薄かった…!けど、あと2局…この決着は味わいたいんだ!似合わねえセリフだが、なら生きねえとな…こんな気分は初めてだ!生きてるってやつだろ…これが!礼を言うぜ、鷲巣」 

いつも冷笑を浮かべる“死を恐れない男”のこんな姿は初めてだ。

「生きたい!最後まで戦いたい!自分と同類の鷲巣巌という異端者との決着を付けたい…!」
そんな純粋な思いが、なぜか我々の胸を打つ。
赤木しげるが初めて「生」を実感した瞬間だったに違いない。

“異才”赤木しげる。
鷲巣巌と邂逅し牌を交えるため、この世に生を受けたのかもしれない。


アカギ-闇に降り立った天才 23(本作品収録巻)

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