みなさんは「ウェザーニュースLiVE」をご存知だろうか。
これは、千葉県幕張に本社を構えるウェザーニューズ社がインターネットで生配信する気象情報番組である。
ニュース番組というと少しお堅い雰囲気を想像しがちだが、当チャンネルは様々なお天気情報を盛り込みつつも、ユニークなキャスターや解説員の笑顔弾ける、見ていて楽しいコンテンツとなっている。
キャスターのお姉さん方はみな美しいのだが、視聴者から寄せられる情報がツボに入り笑いが止まらなくなる者や、普段は穏やかな人柄なのだが新年早々に無風状態の中で凧揚げをやらされ、ヤサぐれている人など個性豊かな面々が我々視聴者を楽しませてくれている。
中でも、入社1年ちょっとの大島璃音(りのん)は天真爛漫で、いつも笑い声が絶えない明るいキャスターだ。
彼女と解説員の切り抜き動画“だんごむし”は再生回数1100万超えを果たすなど、強烈な吸引力でバズっている。
そんな多士済々のメンバーにあって、上記動画に出演していた山口剛央(たけひさ)解説員は、私が最も好きな人物なのである。
山口剛央とは
山口剛央解説員は1973年京都府生まれで、今年50歳になる。
実際に見ていただくと分かるのだが、真面目そうな雰囲気が漂い、一見すると棋士や弁護士にも見えなくもない。
ところが、実は気象一筋ウン十年を誇る、見た目と違う風変わりな人物である。
まず驚かされるのが、昨年初めて炊飯器を買ったという。
これは番組内で視聴者から寄せられた料理に触発され、ガスバーナーやホットサンドメーカーを購入したことがきっかけだ。
「そんなものを買うよりも、まずは炊飯器を買うのが先なんじゃないだろうか…」
原点に立ち返った結果、米の消費量が異常に増えた。
そんな彼は、なぜかパスタを“ゲッチュー”と呼んで憚らない。
どうやらパスタの別名・スパゲッティから派生したようで、語尾の“ゲッティ”を“ゲッチュー”とタ行変格活用させたのではないか…と推察される。
そして、独身の彼は早朝から目を輝かせナポリタンを拵え、その上にまぶしたチーズをガスバーナーで炙って食するのが日課となっている。
秋から真冬にかけては、おじさんが好んで着る一張羅の“おじジャン”なるものを羽織り、片道30分の徒歩通勤で出社する。
その際、肩には必ず出張用を思わせる巨大な鞄を掛けているのだが、基本的には何も入れていない。
時折、折たたみ傘を投げ入れているが、ハードボイルドの彼は基本的に傘を持ち歩かない。
なぜ…鞄が必要?と問われれば、自信満々に「飾りです!」とドヤ顔する。
また、元旦早々にキャスターと興じた「だるま落とし」や「ポカポンゲーム」では、抱腹絶倒の圧巻のパフォーマンスも披露した。
だが、彼はただのポンコツ中年ではない。
業界では、その人ありと謳われる気象予報のスペシャリストなのである。
特に、地震に関する高い専門性は、東日本大震災や熊本大地震の際に遺憾なく発揮された。
中学生の頃から集め続ける膨大なデータの蓄積が、緊急事態で活かされている。
このように硬軟織り交ぜた人物像の“ぐっさん”は、本当に穏やかで人の良さが滲み出る好人物なのである。
こうした親しみやすい人柄も相まって、若い女性キャスターからイジられる毎日を送っている。
特に、大学を卒業したての大島璃音(以下、のんちゃん)は、ぐっさんが好きで好きでたまらない。
名(迷)コンビ
のんちゃんはデビュー初日から、物怖じしない大物ぶりを見せつけた。
以降、底抜けに明るい笑顔と自由奔放なキャラで、ぐっさんを翻弄している。
朝からふたりのやり取りに、思わずホンワカしてしまう。
1. だんごむし
当番組及び名コンビを世間に知らしめたのは、何と言っても“だんごむし”事件である。
春の訪れと共に姿を見せるだんごむしを、日々観察していた山口解説員。
ある日、番組でその話題を紹介した。
すると、ひとしきり解説が終わった直後に、のんちゃんは問題発言をぶっ放す。
「そういうことで、だんごむし“に”解説していただきました」
つまり、この道25年のぐっさんを“だんごむし”呼ばわりしたのである。
すかさず、ぐっさんは苦笑いで訂正する。
「だんごむし“の”解説ですよね?私、だんごむしではない…」
爆笑する、のんちゃん。
「違う、違う…山口さん、違いますよ!(お天気と)だんごむし“も”解説していただきました、って言おうと思ったんですよ。山口さんは全くもって、だんごむしではございません!」
2. 煮卵
気象学という科学を信奉する山口解説員は、占いの類には一切関心がない。
だが、占いの日にちなみ、のんちゃんはやたらと占いを勧めてくる。
「私、占いは信じないです」
素っ気ないぐっさん…。
なおも食らいつくのんちゃんに、ぐっさんは胸の内を打ち明ける。
「さっき、初めてお天気占いをしたんですよ。今日は星5つでした」
素晴らしい運勢に、歓喜するのんちゃん。
「凄―い!この後、良いことあるかもしれない!」
だが、ぐっさんは諦観気味に呟いた。
「たぶんね…無いと思うんですよ…」
「いやいや、ラッキーアイテムとか見て、それを身に纏って…」
だが、ぐっさんは、のんちゃんにトドメをさす。
「ラッキーアイテム…“煮卵”だったんですよ…。なおさら無いよな…て」
静かな抑揚の中にも「どんなラッキーアイテムやねん!ラーメン屋にしか…ないやないか!」という心の声が聞こえて来る。
腹筋が崩壊する、のんちゃん22歳だった。
3. ごきげんよう
「ウェザーニュースLiVE」は早朝から夜遅くまで配信している。
登場するキャスターは時間帯に応じて、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」と挨拶を使い分けねばならない。
そこで、“おっちょこちょいの”のんちゃんは、ある秘密兵器を開発した。
どの時間帯でもオールマイティに使える「ごきげんよう」である。
しかも、どこか上品な雰囲気も演出できる!と上機嫌であった。
気象解説を終えたふたりは、例のごとくフリートークに花を咲かせる。
そして、最後にぐっさんは、のんちゃんに向けてこう言った。
「ごきげんよう!」
新人キャスターの伝家の宝刀を横取りするベテラン予報士。
あまりのドヤ顔に、のんちゃんは笑い出す。
「さすが!かましてきますね~本当に!山口さんだけはホント恐ろしいですよ」
のんちゃんは「やられた~」と悔しがる。
しかし、雑談以上に笑顔の花が咲いていた。
まとめ
我々の生活に欠かせない気象情報。
通常ならば、ここまでのエンターテインメントに昇華させることなど、できはしない。
ウエザーニューズ社の自由な社風が窺える。
ストレスフルで世知辛い現代社会にあって、当番組は見ているだけで笑顔がこぼれるオアシスと言えるだろう。
とりわけ、私のようなおじさん世代は心癒される。
「平凡は妙手に勝る」の典型例のような風情だが、実に味わい深い山口剛央解説員。
これからも、そんな“ぐっさん”と“のんちゃん”ら女性キャスターが織り成す、ときに真面目で、ときに楽しい番組作りに乞うご期待!
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